三密状態になることはほぼないはず、とはいえ・・・。
僕のライフワーク“まちあるき”も、いまは社会情勢を考慮してブラブラは自粛中。
当ブログで時折紹介させて頂く「サンプロまちあるき部」の活動も、
コロナ禍の終息がハッキリするまでは当面休止です。
我慢の時期ですね。
日常生活で不便なこともありますが、みんなで助け合って乗り切って行きたいと思う、
リフォーム設計担当の高松です、こんにちは。
そんなこんなの非常時ですが、日々の仕事は粛々と進めさせて頂いております。
リフォーム設計の大切な仕事、耐震診断もそのひとつ。
過去にも当ブログでその様子を紹介してきました。
そんな診断業務のなかで耐震性能を確認するという主業務以外にも、
いろいろ興味深いモノやコトとの出会いというのがあり、
いささか語弊がありますが、とても楽しくワクワクする体験をさせて頂いています。
そのワクワクを感じられる瞬間のひとつが、“家の履歴”との出会い。
履歴と言ってもなにかの証明書とか図面などの類ではなくて。
もちろんそうした古い資料も貴重な履歴には違いないですが、
ここでいう履歴は建物の内や外、小屋裏や床下といった隠れた場所に潜む、
新築当時や過去に行われた増改築の痕跡のことをいいます。
例えば。
今から60年ほど前に建てられた民家の小屋裏。
1階天井の点検口から入り込むと2階壁の裏側が目の前に。
画像を見て分かる通り、上半分は漆喰仕上げ、下半分は土壁の下塗りが露出しており、
きれいにスパッと切られたように上下に分かれています。
これは何かというと、もともと1階の片流れ屋根がこの壁面に対して
真っすぐに取り付いていた痕跡です。
漆喰で仕上げられた面は屋外に面した外壁で、
その下部は現在同様に天井裏だったため下塗り状態で終えられているものです。
1階の一部を増築したことまではお施主様から伺っていましたが、
屋根の架け替えについてはハッキリ聞いておらず、
しかも建物外観を観察しただけでは全く分かりませんでしたが、
こうして小屋裏を調査することで過去の屋根形状が明確になりました。
柱の色具合も小屋裏だった箇所は汚れが目立つ程度ですが、
外壁だった部分はかなり黒ずんでいるのがよく分かりますね。
またこちらは画像中央の通し柱に刻まれた切り欠きの痕。(赤丸の部分)
この柱に対してそこそこ太い梁が接合していたようで、
緊結するために使用していた金物のボルト孔も残っています。
なぜ梁を外す必要があったのか。ハッキリした理由は分かりませんでしたが、
おそらく改修工事の際に天井高や間取りの都合などから
梁を撤去する必要があったのかもしれません。
それに柱を挟んで向こう側とこちら側。
取り付いている梁も新旧の違いが見ていてよく分かりますね。
ほかにも床下を見てみると、基礎の立ち上がりで細かく区切られているのが分かります。
この画像は耐震診断のそれではなくすでに工事が始まって
床組を解体した直後の写真ですが、当初床下に潜って調査した際、
この二列の基礎に阻まれて区画全体をチェックすることが出来ませんでした。
上部の既存間取りは広い台所でしたから、
それが新築時からの姿だとすればこの床下状態は不自然です。
しかしこの並列する基礎に挟まれた部分が、じつは廊下だったとすればどうでしょうか?
耐震診断後、お施主様の御父様の証言から、やはりこの部分はむかし廊下だった部分で、
さらにその廊下と同じ幅だけ屋外(写真左方向)に増築し、元の座敷だった部屋と
一体にして広い台所ひと部屋にしたのだということが分かりました。
写真に写る二列の土台。左側の中央部と右側の一番下のほうを見ると、
昔廊下だった当時に存在したであろう柱の差し込まれていた”ホゾ穴”が確認できますね。
今回リフォームをさせて頂いたこちらの家では、
まさにこの既存台所を含む区画のLDK化がメインとなる工事でしたから、
この並列基礎は無視することが出来ません。
幸い新しいキッチンの配管工事などには大きな影響もなく、
うまく納めることができたのでよかったですが、
小屋裏の梁や柱と共に床下の基礎の状況も、
リフォームを進める中で少なからず影響が出てくるので、
耐震診断の折には耐力壁をチェックだけでなく、
こうした建物履歴の部分にも、しっかり目を向けて対応して行きたいと思います。
ほかにも釘の話など書きたいことがありましたが、
すでに長くなってしまいましたので今日はこの辺で。
釘話はまた次回・・・たぶん。