11年前、東京から長野へIターンする時に購入した乾燥機が異音を発して動かなくなって1月程が経つ。
中二の長男の体操着が乾かないという妻の愚痴は聞こえていたが
仕事その他の忙しさで電器店に電話一本出来ずにいたら、
今度は洗濯機が異音を発して動かなくなってしまった。
こちらは乾燥機より新しいはずだが、使用頻度としては、
ずっと多いに違いない。
私としては修理すれば直るような気がしないでもないが、
決断を先延ばしにしているうちに家庭内の空気は「新型ドラム型洗濯乾燥機」
へとどんどん傾いていく。
とりあえず、同居している両親の洗濯機を使わせてもらっていたが、
私自身は相変わらずの忙しさで、電話一本出来ずにいたら、
業を煮やした妻が「一人で家電量販店に行ってきた。」と言う。
「ニュース23」を
横目で見ながら、遅い夕食をつついている私を前に
妻はなんだか嬉しそうである。
「今日ねーK電器に行ってきたら、説明がすごく丁寧で感じが良くてね、・・」
感じのいい営業マンに会っただけで、こうも嬉しそうになるものか。
煮え切らない夫にイライラしていた昨日までの空気とは雲泥の差である。
軽い寝不足気味のボーっとした頭で、半分上の空の私にお構いなく、妻の話は続く。
妻「ドラム型洗濯機ってね、実は洗う力は今までの洗濯機の方が優れているんだっ
て。」
私「へエー、そうなんだ。」 (えっ!どういうこと?)
妻「今までの洗濯機は水槽が水平だから、漬け洗いが出来るけれど、
ドラム型は槽が横向きだから、漬け洗いが出来なくて、たたき洗いをしてるんだって。」
私(ウーン、確かに分かり易い説明だ。)
このへんで、立ち上がりの遅い私の頭もようやく回転し始めた。
妻「だから、本当は洗濯機としては、水槽は水平の方が良くて、乾燥機としては
垂直がいいわけで、ドラム型はそれを一つにしようといのだから、
メーカーによって、いろいろと工夫されているって言うわけ。」
開発技術者たちの苦労がしのばれる話だ。
中島みゆきの主題歌が聞こえてきそうである。妻の説明はさらに続く。
妻「だから、あとから出てくる機種の方がどんどん機能が優れているっていうわけ。」
(当然お値段も高いらしい)
そうして、後発のN社に至っては、ムービングドラムなる画期的な商品を産み出した
とのこと。
つまり、洗濯の時はドラムはより水平に近く、乾燥の時はより垂直に近くなるべく、回転軸がMOVEするのである。
日本の技術者は凄い。私の眠気は完全に吹き飛んだ。
後日、にわか洗濯機オタクと化したわが妻は豊富な知識を胸に、
さらに市場調査をすべく、E量販店へと足を延ばした。
するとE量販店の担当者「どのメーカーも大変お買い得になっています。
機能的にはどれも大差ありませんよ。」
妻(えーーっ???)
今や洗濯機博士の勢いの妻に対して、何と無防備な発言!
別の量販店にいたっては、商品の説明は一切なく、
「表示の価格は明日までの特別価格ですからね。」
妻が速攻、踵を返して店を出たことは言うまでもない。
実際にモノを買おうとする人はこんな風にして、
知識を身につけるのだということがよく分かった一件でした。
営業マンたる者、技術者たる者、日々の研鑽を怠ってはなりません。
K.A.